≪生命保険を使った究極の相続税節税対策≫と言われるものがあります。
相続税法24条(定期金の相続税評価)を利用した対策です。
1億円の現金を持ったまま亡くなれば、この1億円に対してまともに相続税がかかります。最高税率の方であれば、1億円の50%(=5000万円)が相続税でもっていかれます。
そこで、相続税法24条を利用し、生命保険を使って節税対策です。保険料1億円を支払い、一時払の個人年金保険に加入します。数年間保険会社に1億円を預けておき、満期を迎えたら、1億円を数年?数十年に渡って年金形式で受取る契約とします。年金受取開始後に相続が発生したら、相続人は残存期間の年金を受け取る権利(=「年金受給権」)を相続することになります。
仮に≪年250万円×40年≫の年金を受取る権利を相続した場合、年金総額1億円です。しかし相続税法24条に定める「年金受給権」の評価方法に従えば、残存期間35年超なら年金総額の20%の評価でOKです。
つまり、≪1億円×20%=2000万円≫で済むのです。これなら相続税も最高で1000万円で済みます。
また、こんな手もあります。
自分が亡くなったら、子供に1億円の死亡保険金が支払われる生命保険を契約します。しかし、このままなら死亡保険金にも多額の相続税がかかってしまいます。
そこで、1億円の死亡保険金を40年間の分割払いで受取る契約にします。
年250万円×40年です。そうすると、この死亡保険金を分割で受取る権利の評価は、≪250万円×40年×20%=2000万円≫でOKなのです。
更に、死亡保険金には≪500万円×法定相続人の数≫の相続税非課税枠もあります。
相続人が4人なら非課税枠は2000万円ですから、結局この死亡保険金には1円も相続税がかからないことになります。
生命保険会社やその販売代理店である銀行の多くは、特に一時払いの年金保険商品の販売に力を入れてきました。
その販売話法はこうです。
「死亡予定年齢の少し前に年金支給が開始するような個人年金保険に加入します。死亡時には、残存期間の年金を受取る権利が年金受給権として評価されることになり、相続税が大幅に圧縮できます。」
そして更にこう付け加えます。
「相続税の税務調査が終わったら、あとは解約して残りの年金を一時金で貰うという方法もあります。そうすれば税務署にもまずバレないはずですが・・・」。
資産家は、手元の現金を使って個人年金保険に加入するだけで、1億円の資産を最大80%圧縮することができるのです。
相続税も5000万円から一気に1000万円に減り、これが≪究極の相続税対策≫と言われる所以でした。
贈与・相続において、相続税法24条(定期金の相続税評価)ほど優遇されている税制は他にないと言っても過言ではありません。
そのため、この税制はここ数年、毎年のように改正の検討課題とされてきました。
そして、平成22年度の税制改正大綱で、ついにその改正が織り込まれました。
これで、相続税対策目的での年金保険の販売は終焉を迎えることになります。
改正後は、年金受給開始後に相続が発生した場合には、次の(1)~(3)のうちいずれか多い金額が評価額となります。
(1)解約返戻金相当額
(2)一時に給付を受け取ることができる場合には、一時金相当額
(3)予定利率等を基にして算出した金額
年金受給総額が1億円である場合、上記の(1)~(3)はいずれもほぼ1億円弱になると考えられます。
従って、長期間に渡って年金形式で受け取っても評価額はほとんど下がらないことになるのです。
この改正は、契約時期に応じて次の取り扱いになります。
(ア)2010年3月31日までに締結された定期金に関する権利に関する契約で、2011年3月31日までに相続等により取得したものについては、改正前の取り扱い。
(イ)2010年4月1日から2011年3月31日までに締結された契約で、同期間内に相続等により取得したものは、改正後の取り扱い。
(ウ)2011年4月1日以後に相続等により取得したものについては、改正後の取り扱い。
つまり、過去に銀行の窓口等で相続税対策のためにこの一時払い個人年金保険を契約した方でも、相続発生が平成23年4月1日以降になった場合には、その対策はまったく意味をなさなくなるということです。
都合よく平成23年3月31日までに相続が発生すれば当初の思惑通り大きな節税効果を得ることができますが、如何せん、人の寿命ばかりは誰にも操作はできません。
更に問題となるのは、年金受給権に贈与税がかかるパターン。
例えば、『契約者=夫、年金受取人=妻又は子』というような契約形態にしている場合。
意図的にこのような形にしているケースもあれば、特に深く考えることなく契約してしまっているケースも多いようですが、この契約形態の場合は、年金受給開始と同時に受給権が『夫』から『妻又は子』へ贈与されたとみなされます。つまり、受取人である『妻又は子』に対して、贈与税が課税されてしまいます。
そのときの評価額も今後はほぼ減額無しとなりますから、『予想外に多額の贈与税課税となってびっくり!』という可能性が大です。
今後は、相続税法24条の活用による生命保険契約で相続税対策を行うことはできなくなります。
と同時に、今現在そのような保険契約をされている方は、要注意です。
まったく役に立たなくなります。至急、相続税対策を練り直さなければなりません。
福岡相続サポートセンターでは、相続税の生前対策や、生命保険を徹底活用した相続対策にも力を入れております。お気軽にご相談下さい。