社会の「高齢化」が進んでいます。
弊社の行っている「相続サポート」の場面でも、「本人に意思能力があるかないか」について問題になるケースが増えてきました。
認知症などで本人に意思能力がない状態になると、生前の相談にもかかわらず打つ手がほとんどなくなってしまいます。
相続対策のすべてに言えることですが、後回しにして何もしないのは良いことではありません。何か対策を講じるのであれば、お元気なうちに、早め早めの実行が一番です。
【 意思能力とは? 】
意思能力とは、有効に意思表示をする能力のことをいいます。
わかりやすくいうと、自分があることをしたら、結果どうなるかをちゃんと理解することができるか、ということです。
また 厄介なのが、意思能力の有無には法的な基準があるわけではなく、問題となる行為ごとに個別に判断されるという点です。
一般的には、幼児や泥酔者、重い精神病や認知症の方には意思能力がないとされます。しかし、認知症などは状態に波があることも多く、判断が難しいことも珍しくありません。
【 意思能力がなくなるとどうなる? 】
意思能力がなくなると、すべての法律行為が無効となります。
例えば、相続の問題を解決するためによく行われる ①遺言書の作成 ②生命保険の契約 ③生前の贈与 ④不動産の活用 などのようなことも、当然行えなくなります。
また、上記4つに関わらず、生前の相続対策のほとんどが「法律行為」を伴いますので、意思能力が無くなってしまうと実行できる相続対策もほぼ無くなってしまう、といっても過言ではないのです。
【 問題は被相続人だけではない 】
また、問題は被相続人だけに留まりません。
被相続人の高齢化は、すなわち、相続人の世代の高齢化も意味します。
例えば、遺言書がない場合は、相続人の中にひとりでも認知症の方がおられると遺産分割協議に支障がでてきます。
また、生命保険金の受取についても、法律行為に当たりますので同様の問題が発生します。特に、昔の生命保険契約は、受取人が特定されておらず、「法定相続人」となっていることがありますので注意が必要です。
【 成年後見人制度について 】
このような問題を解決するために、平成12年に「成年後見人制度」という制度が新しく設けられました。
この制度は、意思能力が不十分な人を保護するため、一定の場合に本人の行為を制限するとともに、本人のために代わって法律行為をする者を選任する制度です。
ただし、成年後見人制度を使用しても、できなくなった行為がすべてできるようになくなるわけではありません。
例えば、生命保険の契約は後見人がいても不可能ですし、遺言も書くことができません。成年被後見人が遺言書を書くことができるのは、一時的に意思能力を回復している時に医師2名の立会いと遺言書への付記が必要などの条件がつきます(民法第973条)。
また、昨今この「後見人」のモラルについて、様々な議論があるのも確かです。
【 最後に 】
繰り返しになりますが、重要なのは「早めに 元気なうちに きちんと対策しておくこと 」です。
このお話しをすると、よく「わからなければいいのでしょう?」「だれかが代筆すればいいのでは?」・・・といったご意見を頂戴します。
しかし、仮にこのようなことをした場合は、万が一裁判などが起こった場合は大きな問題になってくるのは言うまでもないことです。
後見人制度も、利用しなくてすめばそれに越したことはありません。
遺言書の作成や、生命保険の受取人変更など、相続対策は早め早めに行っておきましょう。
以上