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寄与分について

2015.02.10

寄与分とは

 相続人の中に被相続人の仕事を手伝ったり、介護や看護をしたりして、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をしたことで、その貢献に応じた金額が相続分に加算される、その加算分のことです。他の相続人よりも被相続人の看護や家業を一生懸命にやったのに、被相続人の財産を他の相続人同様に法定相続分どおりに分けては、不公平ともいえます。この制度は相続人間の公平を図るためのものです(民法第904条の2第1項)。

 

寄与分が認められるための条件

①共同相続人であること

→多大な貢献をしたとしても、相続人ではない者には寄与分は認められません。

②被相続人の財産の維持または増加があること

→多大な貢献をしたとしても、それが財産の維持・増加に関わらない場合は、寄与分は認められません。

③特別の寄与であること

→被相続人との身分関係や生活関係に応じて、通常期待される程度を超えてはじめて認められます。妻として今まで夫の世話をしてきたとか、単に子供が親の面倒をみたというだけでは、家族として当然のことなので「特別の寄与」には該当しません。

※寄与の判断は①無償性、②継続性、③資金提供性、④相続人であることが基準となります。

 

寄与分が認められる例

・親の介護をした子供

→付き添い看護を常に必要とするような看護に相続人が代わりにあたることで看護費用の支払いを免れた場合など。

・家業を手伝っていた子供

→長年にわたって被相続人の事業(農業、漁業、小売業等)に従事してきた場合などで、一時的に手伝った場合は該当しないと考えられる。

・親の事業に資金提供、資産提供をした子供

→相続人が入院や治療費等の負担をするなどして、被相続人の財産維持や増加に貢献した場合など。

 

寄与分に関する裁判例

・被相続人から学資等を受けて早くから独立した他の相続人の中にあって、学校を中退し、相続開始まで40年以上にわたり家業の農業に従事し農業経営の支柱となって遺産の維持に貢献してきた相続人には、寄与分として遺産の20%を与えるのが相当である(徳島家裁昭和52年3月14日審判)。

・被相続人の療養看護で、親に昼食と夕食を届けるほか日常的な世話を行っていた段階では寄与分にはならないが、認知症の症状が顕著に出るようになったため、子が親の3度の食事を取らせ常時見守りや排便への対応をするようになって以降は特別の寄与になり、1日当たり8000円の3年分876万円を寄与分とした(大阪家裁平成19年2月8日審判)。

※相続財産の2~3割程度の寄与分を認める判例が多いようです。

 

寄与分を含めた相続分の算出方法

 相続財産に占める寄与分の割合は、相続人全員の協議の場で決めます。協議がどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判の申立てをし、手続きをすることになります(民法第904条の2第2項)。

計算式:(相続開始時の財産-寄与分)×法定相続分+寄与分

※最初に被相続人の全財産から寄与分を受け取るべき相続人に渡し、残りの財産を相続人全員で分配します。

【具体例】

被相続人の財産:現金500万円

法定相続人:配偶者、長男、長女

寄与者:長男

法定相続分通りに計算すると、

配偶者:500万円×1/2=250万円

長男:500万円×1/4=125万円

長女:500万円×1/4=125万円

協議をして長男の寄与分が100万円として計算すると、

みなし相続財産:500万円(財産)-100万円(寄与分)=400万円

配偶者:400万円×1/2=200万円

長男:400万円×1/4+100万円(寄与分)=200万円

長女:400万円×1/4=100万円

20150210①.JPG

 

最後に

 寄与分に該当するかどうか不明な場合や、寄与分が争点になってもめてしまいそうな場合は、相続の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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筆者紹介

柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。

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