従来、日本における本人確認に関する法令は、「本人確認法」と「組織犯罪処罰法」の2つで、主に金融機関を対象とするものでした。
その後、対象範囲を金融機関以外にも拡大する必要性が高まり、平成19年に「犯罪収益移転防止法」が制定、翌年に全面施行され、金融機関、不動産業、法律専門家などを含む全43の特定事業者が本人特定事項の確認、確認書類の保管、確認記録の作成の義務を負うことになりました。
そして、確認方法や確認書類の保管については、対面取引と非対面取引、個人と法人、取引の種類等によって細かく分類され複雑なものになり、さらに平成25年の改正では、本人確認事項以外の内容(取引目的、職業または事業内容、実質的支配者等)も確認する義務が追加され、「本人確認」から「取引時確認」へと呼称も改められました。
日常生活では、銀行窓口でこの取引時確認が厳格に行われていることもあり、高額な振込みや払戻しの際には、運転免許証等の確認書類の提示が必要であることは周知されてきましたが、法人口座の新規開設の際に、実質的支配者は?という質問を受け、驚かれ問い合わせを頂くことも少なくありません。
また、不動産の対面取引の現場でも、運転免許証の原本の提示がないまま、写しを更にコピーする光景を静観することもあります。
このように、現状としては確認をする側も受ける側も、認識不足なことが未だ多いようですが、今後、個人法人を問わず、円滑で安全な取引を行うためには、この法令について、少なからず知識をもつことが必要となってきたようです。