土地の評価というのは、同じ場所・同じ面積であったとしても、その利用状況で評価額が異なります。例えば土地の所有者が賃貸マンションを建てた場合は、「貸家建付地」として評価します。
賃貸マンションを借りている人は借地借家法で借家権が保護されており、その借家権の範囲内で間接的ではありますが、土地に対して支配権があり所有者が普通に利用できないという考えから、通常の評価よりも低い評価になります。
その「貸家建付地」の評価の方法は、
相続税評価額 × ( 1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
となります。
例えば、相続税評価が1億円の土地に賃貸物件を建築した場合、借地権割合が40%の地区(これは路線価図等を参照)、借家権割合は30%、賃貸割合(いわゆる入居率)100%とすると
1億円 × ( 1 – 40% × 30% × 100% )
=1億円 × 88% = 8,800万円
となり、差額の1,200万円の評価の引き下げが可能になります。
ではこの貸家建付地の評価方法について、3つのポイントがありますので見ていきます。
【①一時的に空室であった場合の賃貸物件】
上記の賃貸割合とは簡単にいうと入居率ということは説明しましたが、たまたま1室が、1週間だけ空室があった時に相続が開始した場合も空室と判断されて、例えば賃貸マンションで10室中2室が空室だったら、入居率が80%となり
1億円 × ( 1 – 40% × 30% × 80% )
=1億円 × 88% × 80% = 9,600万円となり、
差額は800万円になったら納得がいかないと思います。
そこで『継続的に賃貸されていた』とされれば、計算上賃貸割合は100%でいいとされています。
退去後すみやかに募集をしていない、自分の荷物を置くための倉庫等の他の用途に供している、空室期間が異常に長いなどの場合には、総合的に見て『継続的に賃貸さていたとはいえない』と判断される可能性があるので注意が必要です。また自宅を賃貸に出していて、たまたま相続開始時に空き家であった場合は上記の取扱いができませんので注意が必要です。
【②駐車場付の賃貸物件】
駐車場は原則として自用地評価です。ただし賃貸物件の敷地内の駐車場でその利用者が全員賃貸物件の入居者であれば賃貸物件と一体としてその敷地全体を「貸家建付地」として評価できます。
しかし、その駐車場が物件に隣接していなかったり、入居者以外に賃貸している場合は、駐車場部分を自用地として評価しないといけませんので、その場合は注意が必要です。
また敷地内に時間貸駐車場(コイン駐車場)を設置している場合も同様に自用地評価になりますので、その利用部分のみを自用地として評価し、他の部分を「貸家建付地」に評価できる場所に設定する必要があります。
【③高層分譲マンションの賃貸物件】
例えば35階建ての高層分譲マンションでひとつは東南角部屋の35階部分で分譲価格が8,000万円、もうひとつは北向きの2階で4,500万円の物件があった場合でも相続税評価は平成29年の法改正があったもののほとんど同じ評価です。
これらの床面積が同じだった場合、土地の評価も同じになります。なぜなら分譲マンションの土地の評価は敷地全体を建物の床面積で按分するのが通常だからです。
例えば8,000万円で購入して、賃貸物件として募集し入居が決定した場合には、建物部分は借家権割合を引下げ、土地については敷地の割合(敷地利用権)分の評価について「貸家建付地」の評価が利用できます。
評価の引下げ対策としては、とても有効ですが、購入した場合の地震や火災、空室リスクを考えておく必要があります。
以上、いくつかのポイントをお伝えしましたが、今後相続税が増税していく中で最も重要なポイントは、もっている資産、特に土地の評価をどう引下げるかということが大切です。その中でもこの「貸家建付地」について詳しくご説明しました。ご参考になれば幸いです。