相続・認知症対策は、「家族信託+任意後見契約+(公正証書)遺言」の3点セットで!
家族信託は、『ご本人(委託者)が元気なうちに信頼する相手(受託者)に自分の財産の全部又は一部を託し、託された財産を受託者が予め定められた目的(信託目的)に従って特定の人(受益者)のために管理・運用・処分する仕組み』です。財産に対する正当な権限が委託者から受託者に移転するため、将来ご本人の判断能力に問題が生じたとしても、受託者がその財産の管理・運用・処分を自分の判断と手続きで全て行うことができます。また、家族信託では、成年後見制度のように家庭裁判所が直接関与・監視することがないため、ご本人やそのご家族の希望に沿った、より自由で積極的な財産の運用や、継続的な相続対策の実行も可能となります。
この1~2年、当社には家族信託に関するご相談が大変多く寄せられるようになってきました。特に、将来の認知症リスクに備えたいという、ご本人やそのご家族からの相談が増えています。そういう意味では、家族信託という手法が世の中に確実に認知されてきたと言えるでしょう。
しかしその一方で、「家族信託さえしていれば後見人は不要」「家族信託さえしていれば遺言は不要」といった誤った認識をお持ちのお客様も少なくありません。その点は、非常に注意が必要です。
【家族信託と成年後見制度】
家族信託では、信託された財産以外の財産に対しては、受託者が関与することができません。従って、ご本人の判断能力に問題が生じてしまうと、信託していなかった財産については、ご家族といえどもまったく手が出せなくなります。かといって、全財産を信託してしまうと、ご本人が自分で好きに使える財産が無くなるため、ご本人の判断能力に問題が生じるまでの間はかえって不自由な思いをすることが考えられます。
また、家族信託における受託者の権限は財産の管理・運用・処分に限られるため、成年後見制度における後見人のように、本人の身上監護(介護や入院や入所の契約を本人に代わって締結するなど)を行うことはできません。
従って、やはり家族信託と成年後見制度は併用が望ましいでしょう。そして、将来は自分の意図した者(子供など)が確実に自分の後見人になれるようにしておきたいのであれば、成年後見制度は法定後見ではなく任意後見を選ぶ必要があります。つまり、お元気なうちに子供などと任意後見契約をしておくことです。そうでなければ、多くのケースで、後見人はそれまでにご本人やご家族が会ったこともない第三者(弁護士や司法書士など)になってしまいます。
結論としては、家族信託と任意後見契約の併用が基本になるということです。
【家族信託と遺言】
家族信託では、信託契約の中で「二次以降の受益者」や「信託終了時の残余財産の帰属権利者」を決めておくことで、遺言と同じような機能を持たせることが可能です。しかし、これは当然ながら委託者から信託された財産のみに対する効力であり、信託されていない財産については、遺言書を作成しておかない限り、相続発生後に相続人全員による遺産分割協議が必要になってしまいます。
また、遺言書が持つ財産以外の心情的な部分や規範的な部分について、家族信託が代行することはできませんし、遺言には「遺留分減殺請求の順序の指定」など、他の制度にはない特有の効力があります。
従って、やはり家族信託と遺言は併用が望ましいでしょう。
相続・認知症対策において、家族信託には成年後見制度や遺言には無い数多くのメリットがありますが、全てを家族信託だけで解決できるものではありません。最大の効果を発揮するのは、「家族信託+任意後見契約+(公正証書)遺言」の3点セットなのです。
弊社では、弁護士や司法書士といった専門家とともに、お客様に対して上記3点セットの活用を積極的にご支援しています。まずは、お気軽にご相談ください。