相続した不動産の売却相談を受ける際、「休眠担保権」について聞かれることがあります。
「父の代、何十年も前の抵当権(担保)が残っていて困っている」というものです。
休眠担保権とは、明治、大正から昭和初期にかけて設定され、その後、既に完済しているかどうかも分からず抵当権者(債権者)との連絡も取れず、長年にわたり放置されている抵当権などの担保権のことです。
債権額が金50円、損害金は日歩4銭、債権者の住所が旧町名で記載されていたりします。また、抵当権者(債権者)は法人の場合もあれば個人の場合もあります。しかもお金を借りた本人(被相続人)はすでに亡くなっていて、当時の状況を聞けるわけもなく困ってしまうケースが多々あります。
不動産を売却する際には必ず「売主による負担の抹消」という義務が生じます。売却物件についている抵当権等の担保権を所有移転の時期(売買決済)までに抹消しなければならないというものです。古く、休眠しているからといって、この休眠担保権が残ったまま売却することは出来ません。
【休眠担保権を放置した場合のデメリット】
では、どのようにして休眠担保権を抹消すればよいのでしょうか(個別具体的な担保抹消の手続きや方法については相続サポートセンター所属の司法書士をご紹介いたします)。
抵当権者と連絡が取れるのであれば、担保抹消に協力してもらうようお願い出来るのですが、抵当権者と連絡が取れない、行方が知れないことがほとんどです。その場合には、
数十年も放置されてきた抵当権、手元に完済を証明出来る資料が残っていることはほとんどないでしょう。
また、供託をする場合には少額であればよいのですが、数十万、数百万円など高額になると困難です。逆に金額が少ないので供託してしまおう!と考えても、この方法は債権者が行方不明の場合にしか利用する事ができません。債権者が会社の場合には、会社を解散して精算結了まで終わってしまっていても閉鎖登記簿が取得できれば、行方不明であるとは言えず、この方法は使えない事になります。最後の手段で裁判を提起!と意気込んでも、やはり期間や費用が心配になり尻込みするものです。
もちろん全てのケースにそれぞれ事情がありますので、まずは所有している不動産にこれらの抵当権などの休眠担保等が残っていないか確認することが大切です。売却査定を依頼した不動産会社の社員が登記簿を取得して休眠担保に気づいても、「こんな古い抵当権、残っているはずないだろう」と見過ごされたこともあると聞きます。売買契約直前で発覚したものの安易に契約し、決済日までに抵当権を抹消出来ず、買主さんから違約金を請求されたという事案も耳にします。
また、相続した不動産を売却する際には、『取得費加算費加算の特例』という特例を使える場合があります。簡単に説明すると、その不動産を相続するために支払った相続税を、取得費(経費)として売却金額から差し引いていいという特例です。ただし、この特例を適用するためには、下記3つの要件があります。
また、相続した不動産を売却して相続税を納税しようと考えている場合にも注意が必要です。納税期限は相続が発生してから10か月以内。原則として現金で納税しなければなりません。納税のために売却する予定だった不動産に休眠担保権がついており、納税期限までに売却できない…という事態にならないよう、早めのご確認をお勧めいたします。
どのように確認したらいいか分からないなどご不明な点がありましたら、お気軽に相続サポートセンターまでご相談ください。