大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
平成29年12月14日に、政府から平成30年度 税制改正大綱が発表されました。現在の政治情勢では、このまま成立すると思われます。
様々な改正事項がありますが、今回は「小規模宅地の特例」の改正についてお知らせしたいと思います。もともとの法の主旨に反する「節税対策」が横行した結果、国がそれを問題視し改正に至った典型例です。一定の条件を満たす人の税を免除したり、繰り延べたりする特例は様々あります。しかし、節税のためにその特例が使える状況をわざと作り出す手法が、一部の税理士やインターネット・週刊誌などのメディアで拡散し、その方法を「悪用」する人が増えすぎれば、国がその抜け穴をふさぐ動きをするのは当然と言えるでしょう。
【小規模宅地等の特例とは】
小規模宅地の特例をごくごく簡単にいうと、A:自宅を持っていない相続人が被相続人の住んでいた家を相続したり、B:相続人が被相続人の営んでいた事業と事業をしていた不動産(店舗・工場など)を引き継いだり、C:相続人が被相続人の所有していた賃貸不動産(賃貸マンション・アパートなど)を引き継いだりする場合に、その相続した土地の評価が一部減額され、結果相続税の負担が軽減されるという制度です。
国も鬼ではありません。A:住む家を売らないと相続税が払えないとか、B:お店を閉めて売らないと相続税が払えないというのはあんまりなので、ある一定の条件を満たせば、相続税を下げてあげるよという「特例」なのです。
例えば、A:持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例(通称「家なき子の特例」)は、土地の評価額を330㎡まで8割引きと、大変大きな税負担軽減効果があります
【「A:家なき子の特例」を悪用するケースが目立った】
しかし、この「A:家なき子の特例」を適用するべく、節税目的でわざと下記のようなことをする人が増えていました。
・「自分の子(被相続人から見れば孫)など」に家を贈与もしくは売却して、わざと被相続人(親)が亡くなったときは「家なき子」になるようにする。(その家は自宅としてそのまま住む)
・「自分の親族が作った会社」に家を贈与もしくは売却して、わざと被相続人(親)が亡くなったときは「家なき子」になるようにする。(その家は社宅としてそのまま住む)
これはまったく「家なき子を守る制度」になっていないということで、今年、下記のような改正が入りました。特例の主旨から言えば、当然と言わざるを得ません。
平成30年度 税制改正大綱
(平成30年4月1日以後に開始する相続について適用される見込み)
持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げるものを除外する。
1)相続開始前3年以内に、その相続した者の3親等内の親族等が所有する国内にある家屋に居住したことがある者。
2)相続開始時において居住している家屋が過去に自己所有であった者
【「C:貸付事業用宅地等」も改正が入りました】
C:賃貸マンションやアパートなど被相続人が貸付事業をしていた土地について相続税の負担を軽減する特 例も、良く活用されていた制度です。貸付事業用宅地等については、土地の評価額を200㎡まで5割引きできます。
こちらも、亡くなる直前に分譲マンションなどを購入し、相続後に売却するという事例(いわゆる「タワーマンション節税」など)が目立ったせいか、下記のような改正が入りました。
平成30年度 税制改正大綱
(平成30年4月1日以後に開始する相続について適用される見込み)
貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に、貸付事業の用に供された宅地等を除外する。
※相続開始前3年を超えて事業的規模(5棟10室以上)で行っている者は、当該貸付事業を行ったのが3年以下でも除外しない。
※平成30年4月1日より前から貸付事業を行っている宅地等は除外しない。
【「法人なり」にも影響が出ています】
また、上記の改正で、いわゆる「法人なり」のスキームにも影響が出ます。「法人なり」は様々なパターンがありますが、その中で最も多い「土地の名義はそのままで、建物の名義だけを自分の設立した法人に変える」パターンの場合に今回の改正が関わってきます。
例えば、被相続人が行っている貸付事業が、1棟の賃貸マンション(20室)のみで事業的規模だったとしましょう。そのマンションを法人に売却し、その法人から被相続人が地代をもらう形に変更したとします(いわゆる法人なり)。
従来は、法人なりする前も、法人なりした後も「貸付事業用宅地等」として、200㎡まで5割引きの適用を受けることができました。しかし、改正後は、法人なりした瞬間 オーナー個人の貸付事業は法人への貸地1ヶ所のみとなり、「事業用規模」でなくなってしまいます。よって、法人なり後3年経過しない限りは、200㎡まで5割引きの適用は受けられないと考えられます。
今回の相続税の改正は、かなり「納税者が不利な改正」と言えます。
私達は、「相続に強い税理士」といつもチームを組んで、相続相談に対応しています。必要な際は、いつでもお気軽にご相談ください。