大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
生命保険は、相続対策の「万能選手」と言われています。「分割対策」にも「納税対策」にも「節税対策」にも「二次相続対策」にも効果を発揮する、なくてはならない手法です。
反面、生命保険は複雑・難解でとてもわかりにくいという欠点があります。また、生命保険を販売している人が、相続のことをきちんと勉強しているのか?という問題もあります。相続相談をお受けしていると、「その人が入るべき生命保険」ではなく、「販売する人が売りたい生命保険」に加入している人にたくさんお会いします。「ああ、この人は相続をきちんと勉強した人から生命保険に入っているなあ。良かったなあ。」と思うことの方が、残念ながら圧倒的に少ないのが現状です。
今回は、私が生命保険診断をしていてよく出会う、代表的な「失敗例」のお話を致します。
【よくある失敗例 ① 】
まず多いのは、加入している生命保険が「終身保険ではなかった」というケースです。
例えば、相続税がかかる人で法定相続人が4名いる場合、500万円×4人=2000万円までの生命保険には相続税がかかりません。生命保険の加入は、もっとも基本的な相続税対策の一つです。
しかし、皆さんが2000万円の生命保険に既に入っていると思っていても、専門家から見ると、相続対策としては不十分だったり、まったく効果が無かったりします。
下記に良くある例を列記します。
1)2000万円の定期保険だった。
2)2000万円の養老保険だった。
3)2000万円の年金保険だった。
4)2000万円の年金保険の年金据置金だった。
5)500万円の終身保険に、1500万円の定期保険特約がついた保険だった。
6)2000万円の終身保険だが、長生きするとお祝い金がもらえる保険だった。 等々
まず最初の一歩として、上記のような契約ではないかどうか、よく確認をしてください。
【よくある失敗例 ② 】
次に多いのが、生命保険の「掛け金(保険料)の支払い方」に問題があるケースです。
掛け金の支払い方には、1)一時払い 2)有期払い 3)終身払いの3つがあます。
このうち、不利な選択になっていることが多いのが、1)一時払い と 3)終身払い です。
1)一時払いでよくある失敗例
50歳~60歳代で、まだまだ有期払いが選択できるのに、「一時払い」の商品を安易に選択してしまう人が多くいます。一回でも掛け金(保険料)を支払っていれば、満額の保険金がもしもの際に支払われるというのが生命保険の「理念」です。しかし、一時払いは、もし掛け金(保険料)を支払って契約が成立した翌日に万が一があったとしても、掛け金(保険料)は戻ってこないという支払い方です。有期払い(たとえば10回払いなど)が選択できる年代の方は、
「有期払いの全期前納」という一括払いのしかたがあります。こちらの場合は、一括払いして契約が成立した翌日に万が一があった場合、1回分の掛け金(保険料)は差し引かれますが、残りの掛け金(保険料)は返金になり、なおかつ満額の保険金も支払われます。
ご高齢でどうしても「一時払い」しか選択できないことはあります。しかし、一時払いは生命保険の良いところである「1回でも掛け金(保険料)を支払っていれば、満額の保険金を払う」というメリットを放棄する支払い方です。
有期払いが選択できるご年齢のうちは、まず有期払いで検討されることをおすすめします。
2)終身払いでよくある失敗例
終身払いというのは、「亡くなるまで掛け金(保険料)を支払う」という支払い方です。保険会社によっては「全期払い」という表現のところもあり、少しわかりにくい言葉です。
終身払いは、1回あたりの掛け金(保険料)が有期払いよりも通常低くなりますので、掛け金(保険料)だけで考えるとお得な感じがします。保険のパンフレットや、ネットの広告などで掛け金(保険料)が載っている場合は、終身払いした時の掛け金(保険料)を掲示している場合が多いです。金額が安くないと、見た人の興味を引き付けられないからでしょう。
しかし、今は長生きの時代です。その方がもし100歳までお元気なら、100歳まで払わなければいけません。例えば、60歳の女性で考えてみましょう。
例)60歳の女性 相続税対策のために、終身の死亡保険に加入
死亡保険金:1000万円 保険期間:終身
年払保険料:40万円/年 保険料払込期間:終身払い
まさかこんな契約しないよと言われるかもしれませんが、このような契約をしている人はけっして珍しくありません。
もう皆さんはお気づきかと思いますが、この保険は25年後の85歳までに、保険会社にトータルで1000万円の掛金を支払うことになりますが、お元気である場合はそれ以後も掛け金(保険料)の支払いは続きます。100歳までお元気であれば、保険会社には40万円/年×40回=1600万円も支払うのに、保険金は1000万円しか支払われません。
それに気づいて、ちょうど1000万円支払った85歳の時に解約したとしても、多くの場合、解約返戻金は総支払保険料を下回ります。しかも、生命保険ではなく、ただの現金になってしまいますので、相続対策にもならなくなってしまいます。
【相続の専門家に、生命保険を診てもらいましょう】
上記はあくまでごく一部の例になり、その他さまざまな失敗ケースがあります。皆さん、お心当たりはありませんでしょうか?
相続対策の生命保険に詳しいのは、生命保険を販売している人ではなく、相続対策をしている人ではないでしょうか? あくまで、生命保険は相続対策の一つに過ぎません。相続対策を考えている人は、相続の専門家である我々に「生命保険の診断」をご依頼頂ければと思います。
以上