生命保険は、相続対策の「万能選手」と言われており、なくてはならない手法です。
しかし「その人が入るべき生命保険」ではなく、「販売する人が売りたい生命保険」に加入させられてしまった人が、非常に多いのが現実です。
今回も、前回に引き続き、代表的な「失敗例」のお話を致します。今回は、私が今まで相談を受けた「生命保険の失敗例」の中でも、とりわけひどかった事例です。
【とある相談者Aのお話し】
とある相談者A(60歳女性)に、相続対策の生命保険の話をしたところ、Aは「相続税を下げる保険でしょ?知っています。もう加入していますよ。」と言いました。
「○○に行った時に、勧められて、たしか2000万円の保険に加入したわ。」しかし、見せて頂いた生命保険は、このような契約内容になっていました。
【A(60歳女性)の加入した生命保険】
家族構成:A、夫B、一人息子C、一人孫D
相続対策をする人:A
目的:相続税の節税?(生命保険の非課税枠?)
契約者:A
被保険者:A
死亡保険受取人:孫D(Aの孫)
保険料負担者:夫B(夫Bの口座から自動引落し)
保険期間:終身保険(一生涯)
保険金:2000万円
毎年の保険料(掛け金):80万円/1年間
保険料払込期間:終身払い(一生涯!)
私は、この保険契約を見て、唖然としました。相続対策になっていないところがいくつもあり、開いた口がふさがらないとはこのことでした。
【この保険の問題点】
① そもそも論ですが、Aは相続税はかからない方でした。両親・夫Bの死亡後も 小規模宅地の特例などの対策をきちんとすれば それほど問題になる資産状況ではなく、節税する相続税自体がありませんでした。
② 法定相続人ではない孫Dを死亡保険受取人にした場合、相続税の非課税枠には該当しなくなり、相続税の課税対象となります。しかも孫は相続税2割加算の対象です。
③ 保険料支払者は夫Bのため、この保険は夫Bの財産となります。Aが亡くなった際に夫Bと孫Dが存命だったとすると、夫Bから孫Dへの贈与という扱いになり、多額の贈与税がかかります。(孫Dが20歳未満の場合は、贈与税なんと695万円!)
④ 保険金は2000万円ですが、非課税枠は500万円×法定相続人の数(夫B+子C)=この場合1000万円です。非課税枠としても入りすぎということになります。
⑤ 終身払い=保険料支払いが一生涯なので、25年後(85歳のとき)に支払いが2000万円に達し、そのあともずっと年間80万円を生きている限り払わねばなりません。しかし、死亡した時にもらえる保険金はずっと2000万円のままです。
私が解説すると、Aの顔がみるみる青ざめ、すぐに加入した保険代理店にクレームの電話を入れていました。
しかし、私に言わせれば、簡単にサインしてしまったA自身の責任も大きいのです。
【相続の専門家に、生命保険を診てもらいましょう】
みなさんの生命保険は、上記のような内容になっていませんか?
保険で大事なのは、契約ではありません。保険金が出る際の「手続き」と「税金」です。
皆さんは、上記のAのようにならないように、くれぐれも気を付けてください。
相続対策の生命保険に詳しいのは、生命保険を販売している人ではなく、相続対策をしている人ではないでしょうか?
あくまで、生命保険は相続対策の一つに過ぎません。相続対策を考えている人は、相続の専門家である我々に「生命保険の診断」をご依頼頂ければと思います。
以上