皆様こんにちは。
税理士の太田圭子です。
コロナウィルスの感染が世界中で広がり、各地で施設の閉鎖やイベントの中止が相次いでいます。
楽しみにしていたコンサートや旅行を断念し、外出も自粛の日々を送っているシニアの皆様、この機会にじっくりと遺言について考えてみてはいかがでしょうか?
1、遺言書の作成は簡単になった
民法の改正により今までハードルの高かった自筆証書遺言も財産目録を自署する必要が無くなり、比較的簡単に作成できるようになりました。しかも令和2年7月10日からは法務局で保管もしてもらえます。これでせっかく書いた遺言書を見つけてもらえない、誰かに処分されるといった事態も回避できます。
2、遺言書についてよくある質問
さて、私も税理士という職業柄、遺言書の作成について相談を受けることや、遺言執行者に選任されることも度々あります。そんな中でよくある質問をご紹介します。
①遺言書を書くことによって相続税は安くなるのか?
②遺言書の内容によって相続税は変わるのか?
③遺言書を無視した財産分けはできるのか?
3、答えはすべてYES
条件付きではありますが、答えはすべてYESです。ここでは簡単に解説していきます。
①遺言書で相続税が安くなる
相続税の申告と納税の期限は、通常亡くなってから10カ月以内です。遺言書が無い場合は分割協議をすることになります。
困ったことに10カ月以内に話し合いの決着がつかない場合でも、納税は待ったなしです。各相続人が法定相続分で遺産を相続したとみなして相続税を納めることになります。
この場合、法定相続分までは相続税がかからない配偶者の特例や、相続税の評価額が最大8割引きになる小規模宅地の特例が使えません。
これらの特例を使うことによって、相続税がゼロになるケースも多く、実際、相続税額が何千万円と違ってくることもあります。
その上、分割協議が終了しない場合、亡くなった方の預金を解約することもできずに、納税資金の捻出に大変な苦労をする方も多いのです。
遺言書があればそれを回避することが可能です。
②遺言書の内容によって相続税は変わる
相続税の評価額が最大8割引きになる小規模宅地の特例は誰がその宅地を相続するかで適用の可否が左右されます。
例えば自宅であれば、同居していた子供や妻が相続すると適用できても、
離れたところにマイホームを建てて住んでいる子供に相続させると使えないといった具合です。
他にも今年の4月より新設される配偶者居住権を遺言書の内容に織り込めば、二次相続で子供たちの税負担を重くしない遺言書を作ることも可能です。
このあたりは個々の事情に応じて複雑な判断が必要ですので、必ず専門家に相談しましょう。
③遺言書を無視した財産分けはできるのか?
相続人全員の同意があれば可能です。遺言書と異なる分け方をしたほうが、相続税の負担が軽くなるなど、相続人全員にとってメリットとなる場合には、選択肢として考えられます。
しかし、遺言書に相続人以外の受遺者(例えば愛人など)がいる場合には難しい方法です。
なぜならその愛人には相続放棄してもらう必要があり、同意を得られるとは考えにくいからです。
4、遺言書を書く前に
相続税の対策も大事ですが、まずは、築き上げた財産を誰に相続させたいか、事業は誰に継いでもらいたいのかなど、ご自身の思いを見つめてみましょう。
その上でご自身の考えに寄り添いながら、ベストなアドバイスを提案できる専門家に相談することをお勧めします。
すでに遺言書を書いてしまった方も大丈夫です。
何度でも書き直しができるのが遺言書ですので、心配な方は専門家にチェックしてもらいましょう。