国税庁は7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる2020年(令和2年)の路線価を発表しました。路線価は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格等を基として算定した価格の80%により評価したものです。
今年の路線価の全国の平均変動率は、昨年比1.6%の上昇(前年は1.3%の上昇)です。変動率の調査を開始した1992年以降、初めて5年連続で上昇しました。再開発やインバウンド(訪日外国人客)の効果で、大都市圏の上昇基調が地方都市にも拡大したことが大きな要因といえそうです。
都道府県別では、上昇したのが21都道府県でした(前年は19都道府県)。上昇率トップは3年連続で沖縄県(前年比10.5%上昇)。次いで東京都(5.0%)、宮城県・福岡県(各4.8%)、北海道(3.7%)という順で伸びました。山形(0.1%)は28年ぶり、山口(0.2%)は25年ぶりの上昇となりました。
反対に下落も26県ありましたが、その内19県は前年と比べ下落率が小さくなっています。
都道府県庁所在地別でみると、最高路線価が上昇したのは38都市でした(前年33都市)。最高路線価の上昇率が最も高かったのは那覇市の40.8%。大阪市・横浜市が30%以上、奈良市が20%以上、札幌・宇都宮・さいたま・名古屋・京都・神戸・福岡・熊本の各市の最高路線価が10%以上の上昇です。逆に、唯一の下落となったのは水戸市の▲2.2%で、横ばいは8都市でした。
路線価トップは、35年連続の東京都中央区銀座五丁目の鳩居堂前で、前年比2.9%上昇の4,592万円/㎡(1億5,180万円/坪)。路線価のバブルピークが1992年(平成4年)で、このときの同地点の路線価が3,650万円/㎡(1億2,066万円/坪)でしたが、2017年(平成29年)にこれを抜き、今年で4年連続過去最高金額を更新したことになります。
なお、路線価全国第2位は大阪市北区角田町の御堂筋で2,160万円/㎡(前年比35.0%上昇)、第3位は横浜市西区南幸1丁目の横浜駅西口バスターミナル前通りで1,560万円/㎡(前年比34.5%上昇)でした。
九州7県の平均変動率は前年比2.1%アップで、4年連続の上昇となりました。プラスとなったのは福岡(前年比4.8%上昇)、熊本(1.4%)、佐賀(1.2%)、長崎(0.9%)、大分(0.6%)の5県。反対に下落したのは宮﨑(昨年比▲0.1%)、鹿児島(▲0.2%)の2県でした。
福岡県の最高路線価は福岡市中央区天神二丁目の渡辺通りで880万円/㎡。前年比11.8%のプラスで、5年連続10%以上の上昇を続けてきたことになります。路線価第2位は福岡市博多区博多駅前二丁目の住吉通りで654万円/㎡、上昇率は県内トップの22.0%でした。
冒頭に記したとおり、今回発表された路線価は2020年1月1日時点の価格です。従って、新型コロナウィルスの影響は一切加味されていません。今年の1月1日から12月31日までに開始した相続や贈与によって土地を取得した場合の相続税・贈与税は今回の路線価を基に算出されるのが原則ですが、未だ収束が見えない新型コロナウィルスの影響で今後の地価が大幅に下がる可能性も否定できません。路線価は1年間固定ですから、もし年の途中で地価が大幅に下落してしまうと、本来の路線価は地価の80%程度になるように設定されているにも関わらず、路線価の方が地価よりも高くなってしまうという現象が起こり得ます。これでは納税者にあまりにも酷です。
そこで国税庁は、そのような状況を防ぐ為に、『今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価を例年9月頃に公開)の状況等により、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、納税者の申告の便宜を図る方法を幅広く検討していく』ことを公表しています。このような対応は過去に例が無く、今回実施されれば初めてのこととなります。
今後とも動向を注視していきましょう。
【令和2年分 都道府県庁所在都市の最高路線価】
(注)宇都宮市及び横浜市は最高路線価の所在地を変更しました。
なお、上段の括弧書は、変更前の所在地における令和元年分の路線価です。
また、令和元年分の対前年変動率は、変更後の所在地における変動率です。
ご参考までに、福岡国税局管内の税務署ごとの最高路線価は、コチラでご確認ください