今回は相続とは少し違いますが、もしご主人が亡くなった場合、ご主人が掛けていた年金はもらえるのか?ということについてご説明したいと思います。
今の日本の年金制度は、自営業者の方が加入している国民年金とサラリーマンが加入している厚生年金の大きくこの2つがあります(公務員の方は共済年金ですが・・・)。
今回はこの2つのケースで、もしご主人がお亡くなりになった場合はどうなるか見ていきたいと思います。
自営業者で国民年金にずっと加入していて、ご主人は65歳でお亡くなりになりました。子供は2人ですでに20歳以上、奥様はその時点で60歳。
国民年金の場合、年金を受けられる遺族の範囲は、死亡当時にご主人に生計を維持されていた(※)「子のある妻」または子で、その子は18歳の年度末までで、かつ、婚姻していないことという条件があります。(他にも納付要件あり。)
年金は受け取れないが、もらえるお金がある!
山田さん一家の場合、子供はすでに20歳以上なので年金を受け取ることができません。ただし「死亡一時金」か「寡婦年金」のいずれか一方を選択して受け取ることができます。
国民年金を掛けていた期間が3年以上あり、一度も年金を受け取らずにお亡くなりになった場合に支給されます。もし35年以上払っていたら32万円を受けとることができます。
国民年金を掛けていた期間が25年以上あり、一度も年金を受け取らずに亡くなり、死亡当時にご主人に生計を維持されており(※)かつ継続して10年以上婚姻関係にあった場合に、奥様が60歳から65歳になるまでの5年間受け取ることができます。金額はご主人が受け取る予定だった年金額の3/4になります。
サラリーマンで、60歳で定年し63歳まで再雇用していたがそこで退職。ご主人は65歳でお亡くなりになりました。子供は2人ですでに20歳以上、奥様はその時点で60歳。
厚生年金の場合は優先順位があります。年金を受けられる遺族の範囲は、死亡当時、その人によって生計を維持されていた(※)配偶者、子、父母、孫、祖父母で、子と孫は18歳の年度末まで、夫・父母・祖父母は55歳以上であることの条件があります。
つまり、第一順位は配偶者と子供、配偶者も子供もいなければ父母、さらに父母もいなければ孫、それもいない場合は祖父母が受け取ることができるというように対象は幅広くなっています。
では、年金はいくらもらえるの?
そして受け取れる金額ですが、ざっくりとご主人の老齢厚生年金の年金額の3/4です。加入月数や物価などによって変動しますので詳しくは年金事務所に確認が必要になります。
またご主人が厚生年金に20年以上加入していると、奥様が65歳になるまで「中高齢寡婦加算」として年額589,900円が追加でもらえます。これはご主人が亡くなった時に40歳以上65歳未満であることが条件になります。
そして65歳以上になりますと、中高齢寡婦加算は打ち切りになりますが、生年月日により年額19,700円~589,900円の「経過的寡婦加算」というものが受け取れます。この生年月日は昭和31年4月1日以前に生まれた奥様が対象です。つまり57歳以上の方になります。
そして今回のケースのように遺族厚生年金をもらった後に、自分も老齢厚生年金を受け取ると「一人一年金」の原則から外れてしまうのですが、平成6年の法改正で、
①奥様の老齢厚生年金
②遺族厚生年金(ご主人の厚生年金の3/4)
③奥様の老齢厚生年金の1/2+②の2/3
の3つから選べるようになりました。
さらに平成19年に改正され奥様の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金の方が高い場合には、老齢厚生年金と遺族厚生年金の差額が遺族厚生年金として支給される方法に変わっています。
このように説明していてもわかりにくい年金制度。今、国民会議というところで議論されていますが、わかりやすい内容になってほしいものです。
(※)生計維持されていた遺族とは・・死亡当時、死亡された方と生計を同じくしていた遺族で、将来にわたって年収850万円以上の収入を得られない遺族