最近では、生涯独身を貫く人や、子供のいない老夫婦で配偶者に先立たれてしまったため孤独になってしまった人など、いわゆる「おひとりさま」と呼ばれる人が増えています。おひとりさまの人は、自分が亡くなった後の葬儀や家財の処分などを誰に任せればいいのだろうと、不安に感じることも少なくありません。
そこで注目を集めているのが「死後事務委任契約」です。死後事務委任契約は、自分が元気なうちに死後の事務手続きを第三者に任せるために結んでおく契約のことをいいます。今回は弊社への相談事例を紹介することで、死後事務委任契約について知っていただき、おひとりさまの人の不安を少しでも解消できる材料をご提供していきたいです。
まずは、次の相談事例をご覧ください。
【相談事例】
Aさん(78歳:女性)は自宅(土地・建物)、預貯金、投資信託を所有しており、結婚していた夫(73歳)は先死し、お子様はいませんでした。Aさんは、先死した夫とは再婚で、初婚の夫とは離婚をしていました。初婚との夫との間にはお子さんが1人いましたが、諸事情により離婚後、全くの疎遠となってしまいました。
Aさんは元気に暮らしていましたが、令和3年4月中旬頃からに体調を崩し、入院や通院の日々が続いていました。ふと気が付くと自分の周りには、家族や信頼できる友人が誰も居ない。ましてや気軽に相談できる人も居ない。万が一、自分が亡くなった時や病気をした時に自分の財産がどこに行くのか、役所手続きといった事務的なことはどうしよう、誰かに迷惑をかけるのではないかと不安に感じ、困った様子で相談に来られました。
今回の場合、弊社からAさんに対し、次のアドバイスを差し上げました。
①遺言書では役所での事務手続きなど、財産の継承以外の死後の手続きについて記載しても、
法的な拘束力はありません。
財産の継承以外の死後の事務手続きを第三者に依頼するためには、生前に死後事務委任契約を締結する必要があります。
そのため、Aさんには、遺言書とともに、弊社へ死後の事務手続きを委任する死後事務委任契約を公正証書によって作成することをご提案しました。
②Aさんがお亡くなりになった後は、弊社が葬儀会社の手配をして、「喪主代行」として葬儀の準備に取りかかります。
事前に関係者のリストを作ってもらい、Aさんが亡くなったことを連絡して、葬儀から火葬、納骨までを取り仕切ります。
その一方で、行政関係の届け出、電気・ガス・水道など公共料金の支払い停止、固定・携帯電話、インターネットプロバイダー、
クレジットカードなどの解約をし、遺品整理の業者に連絡して家財を片付けて、自宅を処分します。
③死後にどのような事務手続きが発生するのかは、Aさんの財産にもよります。
まずは、「エンディングノート」などを活用し、処分を任せたい財産や情報などをとりまとめ、現状を把握することが始めることをお勧めしました。
現状を把握することで、死後の手続きにかかる費用の大まかな目安を知ることもでき、いざという時に備えることもできます。
<まとめ>
①おひとりさまの人には公正証書で遺言書と併せて、死後事務委任契約を作成することをおすすめします。
②死後にお願いしたい事務手続きを、予めリストアップしておくことが重要です。
③まずは、ご家族やご友人などご自身の関係者や、ご自身の財産など、現状を把握することから始めてみましょう!