はじめに
被相続人の財産債務を相続放棄をする場合は、相続税の申告は必要ない方がほとんどかと思います。
しかし、相続財産が基礎控除を超えても諸事情により相続放棄をする場合もあるかと思います。
この記事では、相続放棄をした場合には相続税申告にどのような影響を与えるのかを項目ごとにまとめていきます。
相続放棄とは?
まず相続放棄とは、お亡くなりなった方のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が一切引き継がないことをいいます。
この手続きは相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に一定の書類を提出して行うことになっております。
なお、相続人全員で放棄する必要はなく、単独で行うことも可能です。
相続放棄と相続税申告① 基礎控除
相続税が最低限かからない基礎控除額は3000万円+600万円×相続人の数となっています。
従って、相続人のうち一人が相続放棄が行うと単純に考えると相続人が一人減ることになりますので基礎控除が減少するのではないかと考えがちです。
しかし、相続税法上は相続放棄があったとしてその相続放棄がなかったものとして基礎控除を計算することになります(相法15②)。
従って、相続人が3名だと仮定してそのうち1人が相続放棄したとしても相続税の基礎控除は3000万円+600万円×3名の4800万円となります。
相続放棄と相続税申告② 生命保険等の非課税枠
こちらも相続放棄が行われると相続人が一人減りますので生命保険等の非課税枠も減少すると考えがちですが、実は非課税枠の総額は相続放棄がなかったものとして計算することになります。
つまり、当初の法定相続人の数×500万円が生命保険、死亡退職金の非課税枠となります(相法12⑤)。
しかし、相続放棄をした人が受け取った死亡保険金については、その相続放棄をした人には非課税枠は割り当てることができませんので注意が必要です(相基通12-8)。
相続放棄と相続税申告③ 配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減は、配偶者が相続する財産のうち1億6000万円又は法定相続分いずれかまでは相続税がかからないものとなっています。
しかし、相続放棄があった場合はこの法定相続分をどのように考えるのでしょうか?
答えはこちらも相続放棄がなかったものとして配偶者の法定相続分を計算することになります(相法19の2)。
例えば、相続人が配偶者、子1人の場合で子が相続放棄を行った場合、第二順位である親が相続人となります。このとき配偶者の法定相続分は当初の1/2から2/3へ増加することになりますが、相続税法上は相続放棄がなかったものとして当初の法定相続分の1/2で配偶者の税額軽減の計算を行います。
相続放棄と相続税申告④ 未成年者控除と障害者控除
相続人が未成年の場合と障害をお持ちの方については一定額相続税を減額する措置が設けられています。
この場合、相続放棄した人が未成年者または障害者であって、死亡保険金等をうけとっていた場合は未成年者控除、障害者控除を適用することができます。
相続放棄と相続税申告⑤ 債務控除
相続放棄した人は債務控除の規定の適用はありません。しかしその人が死亡保険金等を受け取った場合で葬式費用を負担した場合においては、その受け取った死亡保険金等の金額から債務控除しても差し支えないものとされています(相基通13-1)。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
この記事では相続放棄と相続税申告の関係性についてまとめました。
①基礎控除
②生命保険等の非課税枠
③配偶者の税額軽減
④未成年控除と障害者控除
⑤債務控除
相続放棄があった場合は相続税にも影響を及ぼしてきますので、上記の視点を持つように留意しましょう。