みなさん、こんにちは、税理士の太田圭子です。今回は不動産オーナーの相続が発生したら必ずやっておきたい「青色申告の承認申請」について解説いたします。通常、個人が開業すると、開業届とセットで必ず勧められる青色申告ですが、相続により事業を引継いだ場合には案内もなく、他の手続きに追われ見過ごされることも多々あります。しかしこの青色申告の承認を受けているか否かで皆さんの税金が大きく変わる可能性があるのでご注意ください。
1、青色申告するメリットは大きい
①損失が3年間繰り越せる
例えば、外壁補修など大規模修繕の費用が多額に発生した年や、収益物件を取得した初年度などは必要経費が家賃収入を上回り赤字となることがよくあります。
青色申告ならその年の赤字は3年間繰り越せますので翌年の税負担を抑えることができます。青色申告していなかった場合は、不動産所得の赤字は、他に給与などの所得があれば通算できますが、無い場合は切捨てになってしまいます。
②最高65万円の青色申告特別控除が受けられる。
相続した不動産が貸家なら5棟以上、賃貸マンションならば10室以上など事業的規模を満たしている場合には、複式簿記で帳簿を作成し期限内に電子申告するなど要件を満たすことにより最高で65万円の青色申告特別控除を受けることができます。この控除を受けることにより所得が下がり、所得税や住民税だけでなく国民健康保険料も安くなることが期待できます。
③その他
事前に届出をすることにより同一生計の家族への給与が必要経費にできたり、設備投資についての優遇措置が設けられたりと多くの特典があります。
2、相続が始まったらすぐに提出したほうがいい理由
①青色申告の効果は相続で引き継げない
例え亡くなった方が青色申告していたとしても、その方の青色申告の承認は引き継がれることは無いため、相続人はあらためて青色申告の承認申請をする必要があります。但し、相続以前から青色申告をしている個人事業者の方など既に承認を受けている方は不要です。
②遺産分割が終わっていなくても青色申告の特典は受けられる
ここが特に大事なポイントです。遺言書が無い場合、遺産分割が完了するまでは不動産は相続人全員の共有状態となり、申告は法定相続分に応じて行われるため、法定相続人となるご家族の方全員が、青色申告の承認申請書を提出することをお勧めします。また、最高65万円の特別控除の対象となる事業規模は共有の場合、持ち分に応じて判定するわけではなく、対象不動産の全体で判定しますので、分割が確定する前の共有状態での申告においても、要件を満たせば相続人全員が各々最高65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。
③提出期限がややこしい
青色申告をしていた不動オーナーの事業を相続により引き継いだその年から青色申告をするためには、亡くなった日がその年の何月かによって3パターンに区分された下記の提出期限までに申請書を提出することが必要です。期限を過ぎると余ほどのことが無いと認められないため早めの提出が安心です。
・死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合
→死亡の日から4か月以内
・死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合
→その年の12月31日まで
・死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合
→その年の翌年の2月15日まで
3、申請書の提出方法
青色申告するには「所得税の青色申告承認申請書」を提出期限までに所轄税務署へ送付する必要があります。申請書は国税庁のHPからダウンロードできます。顧問税理士がいる場合には代理申請してもらうと良いでしょう。