「けんかして家を出ていった次男にはなにも渡したくない。同居している長男にすべての財産を渡したい」
このようなご相談はよくあります。
相続相談に来られる方は、お一人お一人すべて ご事情が違います。誰一人として同じご事情の方はいません。
子の素行不良や、離婚・再婚による疎遠、だれが介護をしたか などなど・・・事情は人によって本当に種々様々です。子どもが複数おられるケースで、何らかの事情で 遺産の渡し方に「大きな偏り」を付けることを希望される方は 少なくありません。
【 本当に長男にすべて相続させることはできるのか? 】
例えば、法定相続人が子ども二人(長男と次男)だったとして、長男にすべて相続させることはできるのでしょうか?結論から言うと、それはとても難しいと言わざるを得ません。
「すべて長男に」という遺言書を書くことは可能ですが、次男には「遺留分」という最低限の権利があります。次男がその遺言書に納得し、遺留分を請求しなければそのまま長男が相続できます。しかし、納得しなければ 次男は長男に遺産の4分の1を請求することができ、それに長男が抵抗することはできません。
遺言書がなかった場合は、次男の法定相続分は長男と同じ2分の1となります。そして相続の手続きは、すべて長男と次男が話し合って合意の上でしか進めることができません。次男が、長男がすべて相続することに合意し、実印を押し印鑑証明を提出してくれれば良いのですが・・・次男にも様々な都合や感情があります。簡単にはいかないことは容易に想像できます。
【 まずは遺言書を書きましょう 】
遺言書は遺留分に勝つことはできません。しかし、遺言すらなければ2分の1ずつどころか、「手続きできない」「分割できない」という最悪の状況に陥ります。
大事なのは、「遺留分を考慮に入れて」遺言を作成しておくこと。
遺言書を作ることで、次男の実印なく相続手続きが進められ、かつ「長男4分の3・次男4分の1」までは確定させることができます。
【 私がおすすめする遺言書の書き方 】
私は「長男にすべて」という遺言書を書きたいという希望の方にも、お一人お一人説得して、以下のような遺言書にして頂くことを心がけています。
「A銀行の通帳は 次男に、それ以外のすべては 長男に」
この次男に相続させるA銀行の通帳は、遺言書を書くときは残高はゼロ円でも良いのです。遺言書には「金額」は一切明記しません。
遺言書を書いた後、次男さんと和解することもあるかもしれません。また、次男さんに対する感情が変化するかもしれません。長男さんが、次男さんと対立することを望まないかもしれません。そういった際に、遺言書を書き直さなくても、この「A銀行の通帳」の金額を上げたり下げたりすることで、次男さんへの思いを表現できるのです。
遺言書を書いた時の残高はゼロ円です。しかしその後、その通帳にいくら入れるかは、天国に行くまでにずっと悩んで、いつでも、何回でも金額を変えることができます。
【 遺言書を書くにも様々なポイントがあります 】
よく目にする遺言書の失敗例として、「均等に分ける」「3分の1ずつ分ける」「3:1で分ける」など、分数で分け方を指定した遺言書があります。これは絶対におすすめしません。これだと、その後に何らかの事情があっても、偏りを調整することができないからです。
おすすめは、自宅はだれに、車はだれに、A通帳はだれに、B通帳はだれに、と一つ一つ指定しておく書き方です。この場合、A通帳とB通帳の残高は遺言書に記載しませんので、その後に金額を自由に調整することができます。
ただし、遺言者本人が認知症などで判断能力を失ってしまうと、預金通帳の残高の調整はできなくなってしまいますので、その点はご注意ください。
遺言書を書く際は、様々なポイントがあります。皆さまも「そろそろ」と思われましたら、ぜひお元気なうちに弊社までご相談ください。