こんにちは、税理士の太田圭子です。さて、今回のテーマは「準確定申告」です。通常の確定申告とは異なったルールもあり、多くの人にとって馴染みの薄い準確定申告ですが、知らないままでは税金に大きな差が生じてしまうことも。今回はそんな準確定申告の注意点について解説します。
1、そもそも準確定申告とは?
亡くなった人の確定申告を、相続人が代わりに行うことを「準確定申告」といいます。
納付税額がない人は義務ではありませんが、医療費控除やふるさと納税など還付を受けるために
行うこともできます。
2、準確定申告の申告期限は相続開始から4か月以内
①税務署から送付された「確定申告のお知らせ」に注意!
亡くなった方がその年に不動産の譲渡をしていた場合など、税務署から「確定申告のお知らせ」
ハガキが届くことがあります。
そこには大きな文字で申告期限が3月15日と書かれていますが、その方が亡くなっている場合は
違います。
亡くなってから4か月以内に準確定申告をしなくてはなりません。
このお知らせハガキを見た相続人が、3月15日が申告期限だと勘違いしてしまった結果、
無申告加算税や延滞税が課税されてしまう。といったケースもありますのでくれぐれもご注意
ください。
②準確定申告の期限を過ぎると青色申告特別控除の65万円が使えない
亡くなってから4か月以内に申告しなければ、事業規模や複式簿記、電子申告など他の要件を
満たしていても65万円の控除が使えません。
その結果、税金が増額になってしまう可能性があります。
3、どちらの申告にいれる?
準確定申告か、それとも相続人の確定申告か、どちらで申告するか選択できる事項もあります。
該当する場合、どちらが有利か判断が必要です。
① 固定資産税
必要経費となる固定資税を経費にするタイミングは以下のいずれかで選択可能です。
A. 納税通知の日
B. 各納期
C. 実際に納付した日
例えば、納税通知は受取済みで、納付前に相続が開始した場合などは、
準確定申告で経費にするか、または相続人の確定申告で経費にするかを選べます。
② 不動産取得税
不動産取得税は課税された年の経費とすることも、取得した建物などの取得価額に含めて減価
償却することも可能です。
準確定申告で税金がでないようであれば、亡くなった方の経費には含めず、不動産の取得価額
に含めて減価償却などにより相続人の経費にした方が有利な場合もあります。
③ 不動産を売却していた場合
選択の余地が生まれるのは譲渡の契約から引き渡しまでの間に相続が発生したケースです。
不動産の譲渡日は引渡し日とすることが基本とされながらも、契約日を譲渡の日として
申告することも認められているため、選択が可能となっています。
一般的には亡くなった方の申告に含めたほうが有利となる場合が多いでしょう。
なぜなら準確定申告で譲渡の申告をした場合、翌年の住民税の課税が無いため、相続人で申告
するより譲渡にかかる税金が少なく済むことが多いからです。但し絶対ではありません。
相続税や譲渡の特例など他の要素も見極めて判断する必要があり、このようなケースでは
税理士に相談することをお勧めします。
4、準確定申告による所得税は誰が納めるの?
基本的には法定相続分に応じて負担しますが、遺言書で指定されている場合や、
相続する財産が既に決まっている場合などは、申告対象の収益不動産を相続した人が
負担するなど、相続した財産に応じて誰が負担するか決めることも可能です。
5、最後に
準確定申告は、大事な家族が亡くなってから、たった4か月で申告期限を迎えてしまいます。
遺族の方には大変なストレスでしょう。
そんなとき私たち税理士がきっと力になれると思います。