4月26日、国立社会保障・人口問題研究所が令和2年国勢調査の確定数を出発点とする、長期的な日本の人口推移を予測した将来推計人口を公表しました。それによると、2056年に人口が1億人を下回り、2070年には、現在の約3割減の8,700万人に減少するとのことです。この人口減少は、すなわち若い人が減り、高齢者が増えるということとイコールでもあります。
出生数は、2059年には現在の約4割減の約 50万人割れになり、14歳以下の人口割合は10%を割り込みます。一方で65歳以上の人口比率は現在の28.6%から38.7%と増加し、現役世代の人口減少が加速するという予測でした。
日本国の人口減少、少子高齢化の加速は周知の事実とは言え、かなり衝撃的な数値です。今後の相続対策は、未来の人口減少、少子高齢化を踏まえて考えていく必要があります。
想像される未来① デジタル化が加速し、より円滑な相続対策が実現
日本では長期的に労働力が減少していくのに伴い、生産性を高めるためのデジタル化が加速します。その結果、相続対策にデジタル化とは無縁ではなくなります。
例えば、5月6日の日本経済新聞の一面に、「デジタル遺言、制度創設へ」という記事が出ていました。法的拘束力のある遺言書をインターネット上で作成、保管が出来る制度の創設に向けて動き出すという内容です。記事には、フォーマットに沿って入力をする形になるため作成が容易になり、紛失リスクやブロックチェーン技術を使用することで改ざんもされにくくなるとのことです。現行の紙で作成する遺言は、どうしても手間と時間がかかり作成が敬遠されがちですが、デジタル技術が普及していくことでより簡単に相続対策が実現されることになるでしょう。私たち専門家にとっても作成のハードルが下がることは歓迎すべき流れです。
想像される未来② 相続税や贈与税は課税強化の方向に向かう?
既に述べたように、日本は今後子どもや現役世代が減り、高齢者が増えていくことから、税収の減少や社会保障費の急増が予測されます。今後その財源をどこから持ってくるかは大きな問題です。広く国民が負担する方法として所得税や消費税を増税するという方法もありますが、全国民に影響が及ぶため一筋縄ではいかないと思われます。そこで資産を多く保有している高齢者の方(正確にはその相続人の方)が負担する相続税が財源の一部になると予測されます。
現に令和6年から、暦年贈与の相続財産への持ち戻し期間が3年から7年に延長されます。これは相続税増税のための法改正です。このように人口減少、少子高齢化の加速に伴い、少しずつ課税が強化される流れになっていくと思われます。
今後、相続税率や贈与税率の引き上げや基礎控除の見直しなどが行われるかもしれません。相続関係の税制改正は毎年のように行われており、今後も注目していく必要があります。
想像される未来③ 税制の特例が改善、強化される可能性あり
先述したように、相続税や贈与税の他、各種税金は課税強化の流れが進むと思われますが、増税の際に付きものなのが、各種特例の改善、強化です。これからの相続対策は、特例をフル活用できるかどうかが大切になってくると思われます。例えば、平成31年に消費税が8%から10%に引き上げられた際は、住宅取得等資金贈与の非課税枠が1,200万円から3,000万円に引き上げられましたし(省エネ等住宅の場合)、令和6年度から始まる暦年贈与の相続財産への持ち戻し期間の延長とともに、相続時精算課税制度に基礎控除110万円が創設されます。このように、増税の際には各種特例の改善、強化はワンセットで行われることが多いです。この記事をご覧いただいている皆様にとって、今後有益な特例の創設や現行の特例が改善されることも想定されます。毎年の動向を見逃さないようにしましょう。
これらは現在ある情報から予測される未来をシミュレーションしてみたに過ぎません。実際は社会の変化とともに相続法や税制が随時見直しされることでしょう。10年後の未来は誰にも分かりませんが、大切なのは今ある情報から未来を想像し、自身の相続対策に活かしていくということです。
そのために大切なのは「知識のアップデート」です。当社が行っている「相続対策セミナー」は開催から116期目を迎え、制度改正が行われる度に資料を随時更新しています。数年前の内容とは大きく異なる内容も出てきています。
5月8日より新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、以前より外出もしやすくなりました。相続対策セミナーを受講してからしばらく時間が経っているという方は、これを機に再度「相続対策セミナー」にご参加いただき、知識のアップデートを行ってみてはいかがですか。