はじめに
お亡くなりになった方が若かったり、孫が祖父母の養子になっていたりする場合、相続人が未成年者(18歳未満)に当たるケースがあります。
この時、親権者と未成年の子供は利益相反関係に当たりますので遺産分割において親権者が子供を代理することはできません。
従って、通常の相続手続きと異なり、家庭裁判所において特別代理人を選任する必要があります。
この記事では未成年相続人の特別代理人選任手続きと税務上の留意点についてまとめております。
未成年者と親権者の利益相反
感覚的にも理解できるかと思いますが、未成年者は制限行為能力者※であり、単独で遺産分割に参加することはできません。
基本的に未成年者が意思決定するときは親権者の同意を得るか、親権者に代理人となってもらう必要があります。
しかし、親権者と未成年の子供がともに相続人となる場合は、遺産分割協議の際に利益相反の問題が生じることになります。
従って、この場合は家庭裁判所に未成年の子供の特別代理人の選任を請求する必要があります。
※自分で意思決定をすることについて制限がかかる人
特別代理人の選任
基本的には親権者が未成年の子供の特別代理人の選任を申し立てることになります。
なお、未成年者の親族その他の利害関係人も特別代理人の選任申し立てすることができると解されています。
また、特別代理人として選任される人の資格に制限はありませんが、未成年の子供と利益相反の関係にある方には特別代理人としての権限を行使できないとされていますので利益相反にならない関係の方を選ぶ必要があります。
弁護士や司法書士が特別代理人となることもありますが、利益相反関係にあたらない親族になってもらうのが一般的です。
税務上の留意点
特別代理人の選任には家庭裁判所に数カ月要することになります。
通常の相続税申告期限は相続開始後10か月以内に申告が必要となりますが、相続人に未成年者がいる場合は選任期間も考慮して相続税の申告手続きを進める必要があります。
仮に特別代理人の選任手続きを失念していた場合、つまり申告期限内に遺産分割が間に合わない場合は法定相続分に応じて相続税の申告を行う必要があります。いわゆる未分割申告というものです。
この際には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できないので一旦多めに相続税を納付する必要があります。
なお、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出することで、実際に特別代理人が選任されて無事遺産分割が行われた後に更正の請求を行うことで、上記の各種特例を適用することができますので忘れずに提出することが必要となります。
また、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が未成年者控除として相続税から差し引くことができます。
この未成年者控除は、未成年者の相続税から差し引ききれなかった場合はその扶養親族である他の相続人の相続税から差し引くことができます。
おわりに
この記事では相続人に未成年者である子供がいる場合の相続手続きや相続税の申告の留意点についてまとめました。
まとめると、
・相続人に未成年者の子供がいる場合は、親と子は利益相反の関係にあたる
・利益相反にあたる場合は、子供の特別代理人を選任する必要がある
・特別代理人の選任手続きは時間がかかるので未分割申告となる可能性ある
・未分割申告となった場合は一部特例が適用できないので注意が必要
となります。
相続人に未成年者がいる場合は上記の点に注意しながら手続きを進める必要があります。