はじめに
相続税の申告に当たり不動産の評価をしていると、埋蔵文化財包蔵地に該当す る土地に当たることがしばしば起こります。
埋蔵文化財包蔵地は税務だけでなく実際の売買にも影響してきますので実務上 の注意点について解説していきたいと思います。
埋蔵文化財包蔵地とは?
埋蔵文化財包蔵地とは、石器・土器などの遺物が出土したり、貝塚・古墳・住 居跡などの遺跡が土中に埋もれている土地であって、そのことが地域社会で認 識されている土地のことをいいます。
埋蔵文化財包蔵地が土地利用に及ぼす影響
文化財保護法では、周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事などを行う場合 には都道府県・政令指定都市等に事前の届出が必要となります。
また、新たに遺跡を発見した場合にも届出を行うように求められています。 届出の結果、発掘調査が必要と判断された場合は、その発掘調査費に対して協 力が求められます。
つまり、基本的には事業者が発掘費用を負担することになります。
しかし、個人が営利目的はなく行う住宅建設等の場合は国庫補助等の公費によ り実施される制度があります。
福岡市の場合ですと個人住宅の場合は国庫補助金による発掘費用の負担制度が あります。
埋蔵文化財包蔵地が土地価格に及ぼす影響
基本的には発掘調査等の費用負担分を考慮して土地の評価がなされることにな ります。
公費負担の場合は問題になりませんが、事業者負担の場合は売却金額相当程度 下がることが予想されます。
埋蔵文化財包蔵地の確認方法
例として福岡市での埋蔵文化財包蔵地確認方法をお伝えします。
手順1 「包蔵地外リスト」 での確認
●周知の埋蔵文化財包蔵地を全く含まない町丁名の一覧を、区別に作成し、 公開しています。
●リストに掲載されている地区は、包蔵地・隣接地の範囲外ですので、工事 に先立つ手続きは不要です
●リストに掲載されていない地区は、包蔵地や隣接地に該当する可能性があ りますので、手順2の方法でご確認下さい。
手順2 「福岡市Webまっぷ」での確認
●福岡市Webまっぷで遺跡の範囲を閲覧・印刷することができます。
https://webmap.city.fukuoka.lg.jp/fukuoka/Portal
補足:相続した土地が埋蔵文化財包蔵地かどうか確認するには、福岡市のように市区町村のホームページで確認できる地域もありますが、市区町村におかれている教育委員会にて「遺跡地図」や「埋蔵文化財包蔵地図」などで確認することもできます。
税務上の留意点
埋蔵文化財包蔵地で税務上注意しなければならない場面は土地の評価です。
財産評価基本通達にはその評価方法について具体的な定めはありませんが、裁決において埋蔵文化財包蔵地の評価に関する考え方が示されています。
具体的には、「路線価方式で土地を評価する場合であっても、その土地の価額に影響を及ぼ すべき客観的なその土地固有の事情については、
1その事情が、路線価の評定 に当たって考慮されているもの 及び
2その事情が類型的に想定できる
として、 評価基本通達上具体的な考慮の方法が定められているもの以外に該当する場合には、その評価に当たって、所要の考慮を検討するのが相当である」とし、発掘調査費用の80%を差し引く形となっています。
もちろん、福岡市のように公費負担の場合は上記のように調査費用を差し引く ことはできないと解されていますのでご注意ください。
おわりに
この記事では埋蔵文化財包蔵地の実務上の注意点について解説しました。
埋蔵文化財包蔵地に該当する場合は調査費用を求められる
発掘調査費用は公費で行われることもある
発掘調査費用を負担する場合は相続税の評価の際に発掘調査費用の80%部分 を差し引くことができる
埋蔵文化財包蔵地を保有されている方は以上のことに注意が必要となります。