「昨年、父が亡くなり遺言に、自宅を母と私で1/2ずつ相続させると書いてありました。
自宅には母が住んでいるので、私は不動産の代わりに現金をいくらかもらえればいいのですが、遺言と異なる遺産分割をすることはできるのでしょうか?」
というご質問がありました。実際はどうなのでしょう?
答えは、遺言と違う分割は可能です。
この場合は母と娘さんで遺産分割協議を行い、自宅を母、現金を娘といった協議書を作成すれば遺言と違った分割をすることができます。
正確に言えば、遺言があっても相続人全員(遺贈があれば受遺者も含みます)の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることができます。
ただ、ここで注意する点が2点あります。
1点目は、遺言執行者が指定されていた場合
この場合、遺言執行者とは遺言内容に従って執行することが本来の職務になりますので、相続人全員の同意をもとに遺言内容と異なる財産処分を相続人から求められても、遺言執行者は遺言に基づいた執行をすることができます。また遺言執行者がいるにも関らず、一部の相続人が遺言に反して遺産を処分してもその行為は無効とする裁判例もあります。
いずれにしても、遺言執行者がいる場合に遺言内容と異なる遺産分割協議を行うときは、遺言執行者を加えた上で成立させる必要があります。
2点目は、相続人以外の第三者が受遺者となる場合
この場合は、第三者がその遺産分割協議に同意するか、遺贈の放棄をすれば可能となりますが、まず同意できないと思います。かつ遺言執行者が指定されていれば遺言の内容と違った分割に同意することは非常に難しいと思われます。
上記の注意点は、遺言があることと遺言の内容を相続人全員が知っていた場合ですが、もし遺言があることを知らずに遺産分割協議が成立し、その後に遺言の存在が明らかになった場合は、別途考慮が必要です。
もし一部の相続人が遺言書を隠していた為だった場合、隠していた相続人は相続欠格になります。
よって、先の遺産分割協議は本来相続資格を持っていない人が参加したことになる為無効になり、欠格者を除いて再度遺産分割協議をする必要があります。
もし相続人全員が遺言書の存在を知らなかった場合は、遺産分割の結果が遺言による相続よりも有利になったり、不利になる相続人があらわれたら、遺産分割協議の錯誤無効となり、再度遺産分割協議をする必要がある可能性もあります。
遺言を作る際は、いろいろ難しいこともありますが、とにかくあまりにも偏り過ぎた遺言は極力避けることをオススメ致します。