普段の生活の中で、○○申込書や○○契約書等の文書のタイトルだけを見て、内容をよく読まずに署名し印鑑を押した経験は、誰もが一度や二度はあるのではないでしょうか。
様々な文書の重要なポイントは、タイトルではなく、文書全体に書かれている内容です。
そして、その文書に本人が署名押印した以上、知らないとか、読んでないとかの言い訳は認められ難いのはご存知のとおりです。
もし、本人がやむを得ない理由により、署名(手書き)ができない場合には、代理人や代筆者が本人に代わって署名をすることにより、本人が署名したのと同じ効果を発生させることができます。
その際は、本人が署名したのではないことを明らかにすることが重要ですので、代理人または代筆者の氏名および肩書きを文書の署名欄に明記した上、代理人の場合は代理人の印鑑、代筆者の場合は本人の印鑑を押印します。
また、予め文書の署名欄に氏名を印字(記名)したり、氏名のスタンプを事前に作成したりする方法もありますが、重要な文書については、提出先の相手方の要求により、この方法が一律に正しいとは言えませんので、その都度、確認が必要です。
次に、押印する印鑑について、認印と実印の違いはどこにあるのでしょうか。
実は、認印も実印も本人が文書に押印した場合は、特別なケースを除き、契約の効力に差はありません。ほとんどの契約は意思表示によって効果が発生し、契約書はあくまで後日に備えるための証拠書類だからです。
よって、契約の法的効力の発生の有無は、本人の意思表示があったか否かによって決するものであって、文書の印鑑が認印か実印かによって、左右されるものではありません。但し、証拠書類の真正(本人が間違いなくその文書を作成したこと)をより強く担保するために、本人しか持っていないだろうと思われる実印と印鑑証明書をセットで要求することは、取引慣習上よく行われています。
なお、特別なケースとしては、実印の押印が法律によって要求される場合があります。例えば、不動産の名義変更や車の名義変更等、公的機関に提出する文書です。これらは法律に実印の押印義務と印鑑証明書の提出義務が明記されていますので、必ず必要となります。
文書への署名押印の際には、以上の点にご注意下さい。
<今回のレポート担当>
酒井司法書士事務所(福岡市中央区)
司法書士 酒井 謙次 先生